ユーザビリティのためのヒューリスティック 10 原則

ユーザビリティ研究の第一人者として著名な ヤコブ・ニールセン氏が公開したヒューリスティック10原則は、その公開から長い年月を経てもなお、インタラクションデザインにおいて重要な指標となります。

  1. ユーザビリティのためのヒューリスティック 10 原則

ユーザビリティ研究の第一人者として著名な ヤコブ・ニールセン氏(Jakob Nielsen, Ph.D.)は、1994年、その幅広い経験則を基に、インタラクションデザインのための一般的な原則を 10 の項目にまとめた、「10 Usability Heuristics for User Interface Design (ユーザーインタフェースデザインのための 10 ユーザビリティヒューリスティックス)」を公開しました。

公開から 25 年以上の時間が経過していますが、その普遍的な原則は、現在のウェブサイト制作、インタラクションデザインの現場においても守るべき原則として価値は色あせません。

この 10 原則について、各項目の概要を簡単に解説したいと思います。

1 システム状態の可視化

デザインは適切、かつタイムリーなフィードバックによって、利用者に情報を提供する必要があります。例えば利用者が何らかの操作を実行した際、そのデータを処理中であれば、処理中であることや進捗状況がわかる表示を行い、処理が完了した時点で完了の通知を行うことで、利用者は自分の操作が処理され、完了したことを知ることができます。

利用者が今いる場所をわかりやすく示したり、複数ステップの処理であれば、利用者があと何ステップで操作を完了させることができるのかを示すといったことも重要です。利用者に通知することなく、何かを変更したり、実行したりといった、利用者に影響を与える動作をしてはいけません。

2 システムと現実世界の一致

デザインは利用者が慣れ親しんだ言葉で情報を伝えるべきです。特定の組織内や業界内でのみ使用される専門用語ではなく、利用者にとって馴染みのある言葉やフレーズ、アイコンや画像、操作ボタンのレイアウトなどを使用することで、利用者は今までの経験を利用して、直感的な操作や問題解決が可能になります。

例えば「戻る」「進む」というボタンが横並びの場合、「戻る」ボタンが左側に配置されることが一般的です。このような現実世界での慣例に従うことは重要です。

3 ユーザーコントロールと自由

利用者は間違った操作をしてしまうことがあります。利用者が間違った操作をしてしまい、望まない結果にたどり着いてしまいそうなとき、それをキャンセルしたり、ひとつ前のステップまで戻れるような仕組みを明確に示す必要があります。ウェブサイトにも現実と同じように、もしもの時の「非常口」が必要です。

あるプロセスの途中で利用者がそれを中断したいと感じた時、それが滞りなく実行できることでシステムに対する決定権が利用者側に委ねられます。利用者の意思でコントロールできるという安心感は重要な要素です。

4 一貫性と標準

ウェブサイトの利用者は、実生活の中で様々なデザインに接しています。そしてその経験を通して操作方法を学習し、あなたのウェブサイトにもそれまでの経験が当てはまることを期待します。つまり、あなたのウェブサイトは、世の中の「慣例」に従うことが求められますし、その上で、それがウェブサイト全体でも一貫性を持っていることが重要になります。

慣例を無視して奇をてらった画面レイアウトを採用し、利用者にナビゲーションメニューを探し回らせたり、ウェブサイト内で一貫性のない用語を同じ意味で使用したりすることで、利用者にそれらが同じ意味であるかどうかを考えさせるような認知の負荷を与えてはいけません。

5 エラーの防止

優れたエラーメッセージも重要ですが、最も優れたデザインは、問題を未然に防ぐことです。例えば 1 ~ 10 までの数字で入力して欲しいなら、間違った入力値にエラーメッセージを表示する前に、1 ~ 10 の数字から選択式で入力できるようにしておけば、無駄なエラーが発生しません。

あるいは重要な決定を行う操作であれば、実行する前に今から実行しようとしている処理の内容を提示し、本当に実行して問題ないかの確認をする確認オプションの実装なども有効な方法です。

6 記憶よりも認識

必要に応じてヘルプを参照できるようにするなど、利用者が事前に記憶したことに頼らないことが重要です。例えば、操作を始めてしまうとヘルプが参照できず、最初に表示される操作方法のチュートリアルを覚えておかなければいけないような、利用者の記憶に負担をかける方法は避けましょう。

入力欄にフォーカスすると入力欄のラベルが消えてしまうデザインも、利用者が入力欄のラベルを記憶していることが前提となっています。

7 柔軟性と使いやすさ

プロセスに柔軟性を持たせることで、様々な方法で実行が可能になれば、利用者は自分に合った方法を選択することができます。例えばキーボードショートカットは、初心者にとっては不要なものかもしれませんが、熟練者にとっては操作性を向上させ、より少ない時間で同じ操作の実行が可能になります。

例えば利用者の趣向にあわせたカスタマイズやパーソナライズ機能の提供も柔軟性と使いやすさに寄与します。

8 美的で最小限のデザイン

そのユーザーインターフェースが提供すべき本質的な機能、価値に焦点を当てることで、無関係な装飾をそぎ落とし、美的ながらも最小限のデザインを心がけましょう。装飾が駄目なわけではありませんが、本質的でない情報が含まれれば含まれるほど、本来伝えるべき情報が薄れてしまう可能性があります。

9 エラーの認識・診断・回復

エラーコードのような利用者が理解しにくい情報は使用せず、エラーメッセージを使用します。また、エラーメッセージは利用者にわかりやすい平易な言葉で表現します。何が問題だったのか、何が起こっているのかをメッセージによって正確に提示することで、利用者が問題点を素早く理解し、適切な解決策に素早く到達できる方法を提案することが重要です。

10 ヘルプとドキュメンテーション

追加の説明が必要ないデザインが最良ですが、利用者が目的を達成するためにヘルプやドキュメントの提供が必要な場合もあります。ヘルプやドキュメントはユーザーがわかりやすい場所に、探しやすい方法で提供しましょう。


「ユーザーインタフェースデザインのための 10 ユーザビリティヒューリスティックス」原文のページでは、文末にこの 10 原則をまとめた無料のポスター(英語)をダウンロードすることが可能です。ぜひ原文をご確認ください。

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