弊社のお客様には以下のようなお話をしてご納得いただいていますが、デザインを単に視覚的な「見た目」を作るだけの工程だと考えている方からは、「デザイン案を色違いで複数欲しい」「デザインパターンを複数見たい」といったご要望をいただく場合があります。
しかし、ウェブサイト制作における「デザイン」とは、単に見た目を作るだけでなく、プロジェクトの企画段階から、ターゲットとなる潜在顧客がサービスへの登録や商品の購入といった最終的な意思決定を行うまでのプロセス(カスタマージャーニー)や、どのようにウェブサイトに訪れるのかといった行動予測などを調査、想定、議論し、それを前提に行うものです。
そして、その設定したターゲットに対して、どのようなコンテンツをどのように配置し、同じく文言やラベルを選定すれば、利用者の体験を向上させ、最終的なコンバージョンや企業、ブランドへの信頼感に結びつくのかといった高度な情報設計プロセスを経て最終的な視覚的デザインにまで到達するものであり、その過程において自然とウェブサイト全体のテイスト、各要素のレイアウトや使用すべき色、フォントなどといった視覚的な方向性も確定するものです。
つまり、ウェブサイト全体の設計がしっかりと行われ、そのコンセプトが明確であれば、視覚的デザインの最適解は 1つであるはずで、色やレイアウト違いの複数案など生まれる余地がないだけでなく、本来、その最適解となる1案にかけるべき時間と労力、コストを無駄に消費してしまうことで、細部にわたってブラッシュアップする時間を失わせ、最終的にウェブサイトの目的達成を妨げるリスクまではらんでいるのです。
ウェブサイト制作者側においても、無批判に複数パターンのデザイン案が出せるということは、厳しい言い方をすればそれはつまり「何も考えていない」ということであり、また、複数のデザイン案から採用するデザインを選択するという行為は、最終的には選定者の好みの問題になってしまい、ウェブサイト利用者の視点に立っていない時点で、本末転倒であると言わざるを得ないでしょう。
この記事は2014年にコラムとして配信した 「本当に複数のデザイン案が必要ですか?」 を編集の上、再掲したものです。