本当に複数のデザイン案が必要ですか?

Column

安易に複数のデザイン案を作るという行為は、Webサイトを利用者のためのものでなく、デザイン選定者の好みによって決まる自己満足のためのものへと変えてしまう、本末転倒な状況を作り出します。きちんとした情報設計プロセスを踏めば、視覚的デザインの最適解も自ずと1つに絞られます。

弊社のお客様には以下のようなお話をしてご納得いただいていますが、デザインを単にPhotoshop等のソフトウェアを使用して視覚的な「見た目」を作るだけの工程だと考えている方からは、「デザイン案を色違いで複数欲しい」ですとか、「デザインパターンを複数見たい」といったご要望をいただく場合があります。

しかし、Webサイト制作におけるデザインとは、単に見た目を作るだけでなく、プロジェクトの企画段階から、ターゲットとなる潜在顧客がサービスへの登録や商品の購入といった最終的な意思決定を行うまでのプロセス(カスタマージャーニー)や、どのようにWebサイトに訪れるのかと言った行動予測、さらにはそのターゲットに対して、どのようなコンテンツをどのように配置し、同じく文言やラベルを選定すれば、利用者の体験を向上させ、最終的なコンバージョンや企業、ブランドへの信頼感に結びつくのかといった高度な情報設計プロセスを経て最終的な視覚的デザインにまで到達するものであり、その過程において自然とWebサイト全体のテイスト、各要素のレイアウトや使用すべき色、フォントなどといった視覚的な方向性も確定するものです。

つまり、Webサイト全体の設計がしっかりと行われ、そのコンセプトが明確であれば、視覚的デザインの最適解は 1つであるはず ※1 で、色やレイアウト違いの複数案など生まれる余地がないだけでなく、本来、その最適解となる1案にかけるべき時間と労力、コストを無駄に消費してしまうことで、細部にわたってブラッシュアップする時間を失わせ、最終的にWebサイトの目的達成を妨げるリスクまではらんでいるのです。

Webサイト制作者側においても、無批判に複数パターンのデザイン案が出せるということは、厳しい言い方をすればそれはつまり「何も考えていない」ということであり、また、複数のデザイン案から採用するデザインを選択するという行為は、最終的には選定者の好みの問題になってしまい、Webサイト利用者の視点に立っていない時点で、本末転倒であると言わざるを得ないでしょう。


※1 もちろん、キービジュアルの候補が 2つあり、どちらもWebサイトのコンセプトに沿ったものなので、その最終決定をデザイン案で行うといった合理的な理由がある場合もあります。しかし、合理的な理由もなく、複数のデザイン案を出すということが慣習化する事態は避けるべきです。