JIS X 8341-3:2016 を読み解く 1.2.3 音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準

JIS X 8341-3:2016 の各達成基準を具体的な実装例などを交えて簡単に解説する「JIS X 8341-3:2016 を読み解く」シリーズ。達成基準 1.2.3「音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準」について解説します。

  1. 1.2.3 音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準

JIS X 8341-3:2016 における、「1.2.3 音声解説又はメディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準」の原文は下記の通りです。

同期したメディアに含まれている収録済みの映像コンテンツに対して,時間依存メディアに対する代替又は音声解説が提供されている。ただし,その同期したメディアがメディアによるテキストの代替コンテ ンツであって,メディアによる代替であることが明確にラベル付けされている場合は除く(レベルA)。

この達成基準は、全盲、あるいは視覚障害のある利用者に対して、同期したメディアによって伝えられる「視覚的な情報」へのアクセスを提供するものです。

「同期したメディア」とは、「他のフォーマットと同期した音声もしくは映像、または時間に依存するインタラクティブな構成要素と同期した音声、または映像」を指しますが、よりわかりやすく言えば音声付きの映像コンテンツや、アニメーションに対してそれと同期される形で再生される音声コンテンツなどのことです。

この同期したメディアによって伝えられる「視覚的な情報」とは、例えば風景を撮影した動画の中で、そこに実際に映し出されている建造物や自然の景観などが該当しますが、視覚による情報の取得ができない、あるいは困難な利用者は、そこに映し出されているものが何かについて解説がなければ、理解することができません。

そのため、映像コンテンツに対して音声解説を提供する、もしくはテキストによる代替コンテンツを提供することが求められています。

適合レベルは「A」に分類されています。

簡単な解説

具体的にどのような適合例が考えられるでしょうか。下記にいくつか挙げてみましょう。

  • ある専門家 2 名による対談の動画が提供されています。動画には、登壇した人物や司会進行役などの登場人物が実際に話す会話以外の情報、例えば登場人物の特徴、会場の雰囲気、誰が発言しているのか、登場人物の表情の変化や重要なジェスチャーといった視覚的な情報が、主要な会話の切れ目で音声として提供されています。
  • ある専門家 2 名による対談の動画が提供されています。動画内の音声は登場人物による会話、および環境音のみですが、その映像に映し出された内容をすべてテキストとして書き起こした代替コンテンツが同時に提供されています。

ただし、その同期したメディアが「テキストによって提供されている情報の代替」であり、かつそのことが明示されている場合は例外として扱われます。例えば、あるサッカーの試合における特定のプレーを、テキストによって詳細に解説した記事が主要なコンテンツとして提供されており、その上で同じシーンを映像によっても補足的に閲覧可能にしてある場合などが該当します。

音声解説について

音声解説は、映像内の人や物の動き、登場人物、あるいはその表情の変化や場面転換、画面上の文字に関する情報のうち、コンテンツを理解する上で重要、かつ主音声では説明されていない、あるいは話されていない情報など、すべてについての解説を提供することが求められます。これらは、主要な会話の切れ目などを利用して、映像の進行に合わせる形で提供される必要があります。

代替コンテンツの提供

テキストによる代替コンテンツを提供することによって達成基準を満たす方法を選択する場合、代替コンテンツ、つまり映像に対する説明テキストは、映像内の主要な会話だけでなく、笑い声や画面外の音といった映像の内容、コンテキスト(文脈)を理解する上で必要な情報、さらに人や物の動き、登場人物、あるいはその表情の変化や場面転換、または画面上の文字に関する情報のうち、コンテンツを理解する上で重要、かつ主音声では説明されていない、あるいは話されていない情報といった、あらゆる視覚的な情報に対する、完全な説明を提供することが求められます。

また、この説明、および会話の書き起こしテキストの順序は、同期したメディアにおける順序と同じである必要があります。

要するに映像で提供されているすべての内容を文字として表現したものと考えると理解がしやすいでしょう。

補足

なお、達成基準 1.2.5 「音声解説(収録済み)の達成基準」は、本達成基準(1.2.3)と同様、音声解説の提供を、適合レベル AA として求めています。

本達成基準においては、「音声解説の提供」もしくは「代替コンテンツの提供」といういずれかを選択する余地がありますが、達成基準 1.2.5 では音声解説が求められているため、適合レベル AA を目標とする場合は、音声解説の提供が必要となります。

つまり、テキストによる代替コンテンツを提供する方法で本達成基準を満たした場合でも、達成基準 1.2.5 においては音声解説の提供が必要ということです。

一方で、音声解説を提供する方法で本達成基準を満たした場合、達成基準 1.2.5 を同時に満たすことが可能になるとも考えられます。

また、達成基準 1.2.8 「メディアに対する代替コンテンツ(収録済み)の達成基準」(適合レベル AAA)においては、代替コンテンツの提供が求められますが、もし本達成基準を代替コンテンツを提供する方法で満たし、達成基準 1.2.5 に基づいて音声解説が提供されていた場合、必然的に達成基準 1.2.8 を満たすことになるでしょう。

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