アクセシビリティに必要なのはほんの少しの想像力

アクセシビリティをあまり難しく考えすぎず、そして特別な施策だと思わず、ウェブサイトにとってアクセシビリティは当たり前の要件であるという風潮、環境を組織内に作り出すことがはじめの一歩となるでしょう。

  1. アクセシビリティに必要なのはほんの少しの想像力

あなたの会社、あるいは組織のウェブサイトには、日々多くの利用者が訪れると思います。その中には、たまたま視力が弱い、目が見えない方がいらっしゃるかもしれません。あるいは何らかの理由によってマウスが使えないためにキーボード操作が主だったり、パソコンの操作が苦手などの理由で何かを操作するのにとても時間がかかる方がいらっしゃるかもしれません。そしてその度合いも、障がいをお持ちの方から、加齢や一時的な怪我、病気によってそのような状況になっている方まで様々でしょう。

また、近年顕著な、ウェブサイト閲覧環境のマルチデバイス化により、職場ではパソコン、家ではタブレット端末、外出先ではスマートフォンなどと、使い分けている方も珍しくはなくなりました。

そうした状況で、マウスでしか操作できない、例えばマウスオーバーに依存した UI を多用したウェブサイトがあった場合、タブレットやスマートフォンで閲覧する方は正しく操作することができないかもしれません。あるいは、外出先で回線の状況が悪く、一時的に画像が読み込めなかった場合など、画像がなければ全く意味が理解できない、あるいは操作ができないウェブサイトでは目的を達成することができなくなってしまいます。

この時、利用者の心象や利便性の問題はもちろんですが、このようなアクセシビリティが確保されていないウェブサイトによって、機会損失が発生している点にも注目しなければなりません。

自分の閲覧環境で利用できないウェブサイトに遭遇し、閲覧を諦めてしまったその利用者は、御社やそのサービスに強い興味を持ってわざわざウェブサイトを訪れてくれたのかもしれませんし、もしかすると将来の優良顧客だったかもしれません。そういった方々に対して、アクセシビリティの欠如は、いわば門前払いをしているようなものです。

そうならないために、最初から利用者の身体的特徴や閲覧環境に左右されず操作でき、情報にアクセスしやすいウェブサイトを作成しておけばよいということになります。それは年齢層や性別にあわせてウェブサイトのデザインを工夫したり、広告の内容や宣伝方法を考えたりするのと同じことです。

想像してみてください。例えば目が悪くても見えなくても、耳が悪かったり、聞こえなくても、あるいは手を怪我してマウスが使えなくても、さらには職場のパソコンでも移動中のスマートフォンでも、居間でくつろいでいるときのタブレット端末でも...... ストレスなく操作ができて、自分が欲しかった情報に正しくアクセスできたり、目的が達成できるウェブサイトがあれば、それはみんなにとってよいことではないでしょうか? それを当たり前にしましょうというのがアクセシビリティの根本的な考え方なのです。

アクセシビリティをあまり難しく考えすぎず、そして特別な施策だと思わず、ウェブサイトにとってアクセシビリティは当たり前の要件であるという風潮、環境を組織内に作り出すことがはじめの一歩となるでしょう。

この記事は2014年にコラムとして配信した 「Webアクセシビリティは「おもてなし」ではない」 を短く再編したものです。

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