Webサイトにおけるアクセシビリティというと、高齢者や障害者向けなど、一部の方向けの対策とお考えの方もいらっしゃいますが、本来のWebアクセシビリティとは、すべての利用者を対象にしたものです。また、アクセシビリティをWebサイトに対する付加価値と考え、「おもてなし」と捉える方もいらっしゃいますが、これも正しくありません。

アクセシビリティに配慮することはすべての利用者が対象となる、Webサイトの必須要件であると認識することが重要です。

情報にアクセスできなければ、Webサイトは無価値

なぜアクセシビリティがWebサイトの付加価値ではないのかといえば、Webサイトに掲載された情報に誰でもアクセスすることができる、どんなデバイスや環境からでも等しく情報を取得することができ、Webサイトにおいて目的を達成することができることは、Webサイトの必須要件であり、これがなければWebサイトはその存在価値を失ってしまうからです。

どんなに凝ったビジュアルデザインも、どんなに素晴らしい機能も、利用者がそれを操作し、目的となる情報を取得したり、目的となるアクションに到達することができない実装が行われていれば、本来の力を発揮しないばかりか、何ら意味のないものになってしまいます。

利用者がその使用デバイス、利用環境、あるいは身体的な事情にかかわらず、必要な情報に到達し、Webサイトを訪れた目的を果たすためには、アクセシビリティに十分に配慮したWebサイトが必要であると同時に、それはあくまで必要最低限の要件であることを認識することが大切です。

Webアクセシビリティに必要なのはほんの少しの想像力

あなたの会社、あるいは組織のWebサイトには、日々多くのお客様が訪れると思います。その中には、たまたま視力が弱い、目が見えない方がいらっしゃるかもしれません。あるいは何らかの理由によってマウスが使えないためにキーボード操作が主だったり、パソコンの操作が苦手などの理由で何かを操作するのにとても時間がかかる方がいらっしゃるかもしれません。

そしてその度合いも、障がいをお持ちの方から、加齢や一時的な怪我、病気によってそのような状況になっている方まで様々でしょう。

また、近年顕著な、Webサイト閲覧環境のマルチデバイス化により、職場ではパソコン、家ではタブレットPC、外出先ではスマートフォンなどと、使い分けている方も珍しくはなくなりました。

例えばマウスでしか操作できない(例えばマウスオーバーに依存したUIを多用するなど)Webサイトでは、タブレットやスマートフォンで閲覧する方は正しく操作ができません。あるいは、外出先で回線の状況が悪く、一時的に画像が読み込めなかった場合など、画像がなければ全く意味が理解できない、あるいは操作ができないWebサイトでは目的を達成することができなくなってしまいます。

この時、利用者の心象や利便性の問題はもちろんですが、このようなアクセシビリティへの配慮が足りないWebサイトによって、機会損失が発生している点にも注目しなければなりません。

自分の閲覧環境で利用できないWebサイトに遭遇し、閲覧を諦めてしまったその利用者は、御社やそのサービスに強い興味を持ってわざわざWebサイトを訪れてくれたのかもしれませんし、もしかすると将来の優良顧客だったかもしれません。そういった方々に対して、アクセシビリティの欠如は、いわば門前払いをしているようなものです。

そうならないために、最初から利用者の身体的特徴や閲覧環境に左右されず操作でき、情報にアクセスしやすいWebサイトを作成しておけばよいということになります。それは年齢層や性別にあわせてWebサイトのデザインを工夫したり、広告の内容や宣伝方法を考えたりするのと同じことです。

想像してみてください。例えば目が悪くても見えなくても、耳が悪かったり、聞こえなくても、あるいは手を怪我してマウスが使えなくても、さらには職場のパソコンでも移動中のスマートフォンでも、居間でくつろいでいるときのタブレットPCでも...... ストレスなく操作ができて、自分が欲しかった情報に正しくアクセスできたり、目的が達成できるWebサイトがあれば、それはみんなにとってよいことですよね? それを当たり前にしましょうというのがWebアクセシビリティの根本的な考え方なのです。

Webアクセシビリティをあまり難しく考えすぎず、まずはアクセシビリティへの配慮が当たり前という風潮、環境を社内に作り出すことがはじめの一歩となるでしょう。

Webサイト制作者にアクセシビリティの知識は必須

もし、あなたの会社がWebサイト制作のプロに自社Webサイトの構築を依頼するのであれば、Webアクセシビリティに関する知識を十分に持った制作者であるかをしっかりと確認することをお勧めします。

Webサイトの規模や運営方法、コンテンツや利用者層などによって、どのレベルでの対応が必要なのかは異なるため、Webサイト制作者にはWebアクセシビリティガイドライン全体への十分な理解や、状況に応じた適切な判断力、幅広い実装テクニックが必要不可欠となります。

逆に言えば、このような知識や技術を持たない制作者は、Webサイトにおける最低限の要件を満たすことができないということになりますので注意が必要です。