最近、「コンテンツマーケティング」などといった言葉がよく言われるようになり、「SEOで重要なのはコンテンツだ」、「被リンクを集めるSEOの時代は終わった」などという話を聞く機会が増えています。しかし、このような話題を真に受ける方は、SEOの本質を理解していないと言わざるを得ないでしょう。

確かに、「○○は終わった」、「これからは●●の時代だ」などという話題はキャッチーで、何か新しい時代の幕開けのような高揚感を感じさせます。ですが、ことSEOに関して言えば、その本質は、

  1. 情報を探している人に対して、欲しい情報を適切なタイミングで届けること
  2. そのために検索エンジン(コンピュータプログラム)がWebページを探し出しやすく、さらにその内容を正しく理解できるようにWebページのリンク構造(外部リンク含む)や文書構造(HTML)などを最適化することによって
  3. Webページのファインダビリティ(発見性)を向上させること

ということに今も昔も変化はありません。

そして、その実現にはコンテンツが最も重要であり、コンテンツを抜きにSEOを語ることはできません。つまり、今も昔も「SEOにはコンテンツが重要」であり、今になって強調されるようなことではないのです。

たまたまスパム行為が発覚していなかっただけ

では、なぜ今頃、「被リンク(を中心としたSEO)は終わった」、「これからはコンテンツが重要だ」などと言われるのでしょうか。それは、検索エンジンのアルゴリズムが進化したことにより、今までSEOと称して行われていた「作為的な被リンクの操作」が、スパム行為として排除される確率が高くなり、次第に以前のような効果を出しにくくなってきていることが挙げられます。

後述しますが、Webページの評価を判断する上で、被リンクは重要な指標です。しかし、この被リンクのうち、金銭のやりとりなどを通じて作為的に行われたリンク、本来なら評価してはいけない不正なリンクを検出する精度が低い時代は、外部からリンクを張るだけで比較的容易に検索エンジンのアルゴリズムを欺き、検索順位を上げることができてしまっていました。

残念ながら、今までSEOと称して行われていた作為的な被リンクの操作は、「たまたま発覚していなかっただけのスパム行為」であって、遅かれ早かれ排除されることは予想されていただけでなく、本来はSEOと呼ぶべきものでもないのです。

被リンクの重要性は何ら変化していない

多くの人にとって有益な情報は、自然と多くのWebページから参照されます。美味しい料理を提供するレストランのWebサイトやその情報が掲載されたWebページは、その味やサービスに満足した多くの方々にブログや専門のWebサイトで言及され、あるいはSNSなどで紹介されます。話題になればニュースサイトなどで取り上げられることもあるでしょう。

同様にある分野や事柄について、とても有益な情報を掲載するWebサイト、Webページも多くの被リンクを集めるでしょう。つまり、有益なコンテンツが多くの被リンクを集めるのは自然なことであり、これを検索エンジンがWebサイトの評価基準にするというのは理にかなっています。

不正な被リンクさえ正確に検出することができれば、被リンクはWebサイト運営者側で意図的にコントロールすることが難しいという信頼性と、Webサイトへの客観的な評価を検証する要素として使いやすいという点からも検索結果の順位決定要素の中でこれからもしばらくは重要であり続けることが予想されます。

もちろん、セマンティックウェブが発展、一般化し、あるいは人工知能のようなものが発達し、専門的な知識を持った人間のように、コンピューターが正確に文章を理解し、被リンク数に頼らなくても検索ユーザーのニーズに応じた検索結果を的確に導き出すことができる未来が訪れれば話は別ですが、それにはまだしばらく時間はかかりそうです。

とにかく、少なくとも現時点において、被リンク自体が価値を失ったということはなく、その重要性は変わっていません。一方で、不正な被リンクの操作を行うリスクが年々高まり、その効果が薄れてきました。それは当然、かつ自然な流れであり、本来喜ばしいことなのですが、そのような行為をSEOだと考えていた人々にとっては、大きな変化と映るのでしょう。

SEOは誰のためのものか

SEOの本質を理解していない方が陥りがちな間違いは、「SEOとはコンテンツホルダー(Webサイト運営者)の利益のために行うものである」と勘違いすることです。もちろん、Webサイト運営者の利益は重要ですが、それだけをSEOの目的と考えてはいけません。

この勘違いをしたままSEOを考えると、

  • どうすれば人気のキーワードで上位に表示されるのか
  • どうやったら競合Webサイトより上位にいけるのか
  • どうやったら検索エンジンアルゴリズムの隙を突いて上位に表示させられるのか

などといったことばかりに気を取られ、結果として小手先のテクニック論に惑わされたり、検索結果の上位に表示することが目的になるような、手段の目的化に陥ります。

本来、SEOは前述の通り、「情報を探している人に対して、欲しい情報を適切なタイミングで届けること」を前提としなければなりません。結果として、

  • 情報を探している人(検索ユーザー)
    必要な情報が必要なタイミングで見つかった → うれしい
  • 情報を提供している人(Webサイト運営者)
    情報を探している人に有益な情報を提供することを通してWebサイトの目的を達成できた → うれしい
  • 検索エンジンを提供している人(例えばGoogle社など)
    自社サービスのユーザーが的確な検索結果に満足してくれた → うれしい

というように、検索行動にかかわる三者すべてが利益を得る状態を目指すものです。

翻って、例えばお金で買った被リンクを集め、検索結果の上位だけを手に入れたとして、コンテンツの質が伴わなければ(検索ユーザーが求めるものと提供される情報がマッチしなければ)、それは検索ユーザーにとっては役に立たない情報であり、そのWebサイトで何ら行動を起こそうとは思いません。つまり、Webサイト運営者に何ら利益をもたらさないということです。もちろん、見せかけのアクセス数は増えるでしょうがそれに何の意味があるのでしょう。

また、検索エンジンを提供している人にとっては検索結果の品質を下げる邪魔なWebページとなり、アルゴリズムが進化すれば排除の対象です。結果として誰ひとりとして得をしない状況になるのです。

潜在顧客の検索行動と意思決定までのプロセスを想定する

顧客として想定される人が、どのような時、どのように検索をするのかといった「検索行動」と、実際に情報を得ながら、サービスへの登録や商品の購入といった最終的な意思決定を行うまでのプロセス(カスタマージャーニー)を想定することはSEOの戦略に大きな影響を与えます。

「コンテンツが重要です」となると、今度は「とにかくページを増やせばよい」と考える方もいますが、潜在顧客の検索行動や意思決定プロセスを無視したコンテンツの拡充は手段の目的化であり、意味がありません。

まずは意思決定に至る各プロセスにおいて、どのような検索行動が想定され、そこに対してどのような情報を提供すればよいのかを検討して必要なコンテンツを洗い出すことが重要です。

そして、コンテンツのファインダビリティを向上させるために必要な施策を検討して実行し、さらに結果を検証して継続的に取り組んでいくことで、潜在顧客に対する自社ブランド、Webサイトとの接触機会を向上させ、最終的な目的を達成することに寄与してこそ本来のSEOなのです。