この記事はもうずいぶん前ですが、2006年に私が個人のブログに書いた記事を一部手直しした上での再掲載です。(元記事

企業が自社のWebサイトをメディア化し、積極的な情報発信によってマーケティングに活かす、所謂オウンドメディアは、多くの企業様から注目されている分野です。また、近年はコンテンツマーケティングという言葉がもてはやされ、企業が積極的に情報・コンテンツを発信していこうという機運が高まっています。

しかしその一方で、何を情報として発信するのかが定まらない、あるいは発信する情報・コンテンツが自社にはないと思われている企業様も、実際にお話を聞くと多い印象です。

発信する情報・コンテンツがないと思ってしまうひとつの原因としては、読み応えのあるコラム、ものすごく面白い企画記事、インパクトのある新製品・新サービスのリリース記事などが発信すべき情報である、という思い込みが挙げられます。すると当然、そんなものを定期的に作り出せるようなリソースは自社にないので...... といった感じで諦めてしまうと。

もちろん、そういった情報を定期的に発信できれば、それはそれですばらしいのですが、一方でコンテンツマーケティングの視点に立てば、単に読み物として面白い、企画としてインパクトがあるというだけでは意味がありません。発信する情報によって、潜在顧客の意思決定プロセス(カスタマージャーニー)にプラスの影響を与えなければならないのです。

そう考えたとき、企業が伝えるべき情報としてはもっと重要で、しかもどの企業にも等しく存在するものがあります。

それは、「物語」。

Humans are not ideally set up to understand logic; they are ideally set up to understand stories.

Roger C. Schank (A Whole New Mind , Daniel H. pink , P100)

人間は論理を理解するようにはできていない。人間は物語を理解するようにできているのだ とは認知科学者、ロジャー・C・シャンク氏の著書、「A Whole New Mind」にある言葉。人間は物語の形をとって伝えられたほうが、より明確に情報を理解することができ、しかも印象に残るというもの。

アクセスできる情報の量が飛躍的に増大し、さらにその情報へのアクセスが容易になった現在の世の中では、1つ1つの情報が与えるインパクトは相対的に低下してしまいます。ありきたりな商品・サービス紹介、スペックや売りたい機能を羅列しただけの情報では消費者に実際のアクションを起こさせるにはもはや不十分。

商品、サービスに関わる 「物語」 を伝えることで 「共感」 してもらうこと、潜在顧客との感情的なつながりを獲得することが大切になってくるというわけです。

その商品、サービスが生みだされるまでの物語、その商品、サービスによって生まれた物語などなど...... 物語はどの企業にも必ず存在します。企業内にあふれる物語を見つけ出し、伝えること。それが今、企業が行うべき情報発信の第一歩、かつ重要な視点と言えるでしょう。

まずは自社の物語を見つけ出すところからやってみてはいかがでしょうか。