Windows XP のサポートも終了し、今年8月にMicrosoftから発表されたInternet Explorer(以下IE)のサポートライフサイクルで、Internet Explorer 8(以下 IE8)のサポートも2016年1月までとされる(参考記事)など、今までOSのシェアなどによってWebサイト制作時にサポート対象外とするのが難しかった古いブラウザを、サポート対象外とする動機、周辺環境が整ってきました。

しかし、Webサイトにおける「サポート対象外」を「閲覧できなくてもよい」と安易に考えてしまうのはすこしもったいないかもしれません。

「サポート対象外」の意味

あるWebサイトの動作要件において「サポート対象外」となったブラウザからのアクセスに対して、そのWebサイトがどのような動作をするかは、非常に大雑把にではありますが、下記の2つに分けられます。

  1. 動作しない / アクセスすることができず、アクセスするにはブラウザのアップデートを強制(要求)される
  2. 多少の表示誤差や一部補助的な機能が使えないといった制約はあるものの、アクセスは可能である

例えば、Webアプリケーションのような高度な機能を提供する場合には、古いブラウザの最新技術に対する対応度合いや、処理能力等の問題から各ブラウザの最新バージョン、もしくはその一世代程度前のバージョンまでしかサポート対象としないといった対応は珍しくないでしょう。

古いブラウザのサポートに開発リソースを割くより、新しいブラウザ向けに注力する方が合理的な判断と言える場合も多いでしょうし、Webアプリケーションという性格上、より便利に、快適に動作するアプリケーションを提供するために動作環境を制限することに対して、利用者からの理解も得やすいでしょう。つまり、上記(1)のような対応は妥当な判断だと言えます。

実際に、Google 社は自社が提供するWebアプリケーションのブラウザサポート方針において、各ブラウザの最新版とその 一世代前のバージョンのみをサポート対象とすると定めています(参考記事 / 英語)し、Facebook、Twitterなど大手Webサービスを筆頭に、古いブラウザでは閲覧できないWebサービスも珍しくありません。

しかし、通常のWebサイト、例えば企業や組織のWebサイトにおいて(1)の対応をしてしまうと、ユーザーは 「それならいいや」 と離脱してしまう可能性が高く、企業にとっては機会損失になりかねません。

というのは、前述の通り、Webアプリケーションの場合は、「より便利な機能、より快適にアプリケーションを使用するためだから」 という理由で比較的ブラウザのアップデートに対して比較的ポジティブな印象で取り組みやすいのに対して、たまたま検索などで訪れたWebサイトに対しては、そこまでして閲覧しなくてもいいと考えられてしまう可能性が高いからです。

最低限の情報は取得できるように

ではどうすればよいのでしょうか? それは、上記で挙げた、(2)の方の対応。多少レイアウトが崩れたり、主要な閲覧行動や操作には影響しない範囲の表示・機能誤差については妥協した上で、古いブラウザでも最低限の情報の取得は可能になるように実装するのが望ましいと考えます。

その上で、すべての機能や、本来のデザインで閲覧したい場合は、ブラウザをアップデートしてもらえるとよいですよという案内を表示するといった方法をとると、アクセスするにはブラウザのアップデートが必須になってしまう(1)の対応に比べ離脱は防げますし、機会損失の低減につながります。

サポート対象とするブラウザを決める作業は、要件定義の課程で比較的どの企業様も行いますが、サポート対象外のブラウザでアクセスしたときにどうするのかまでは決めておらず、制作会社に任せている場合も多いと思います。

しかし、その実装方法によっては、思わぬ機会損失を招く場合もありますので、事前にきちんと取り決めておくことが大切でしょう。