Webアクセシビリティ対応で無駄な手戻りを防ぐために

Column

Webアクセシビリティ対応を「最後に専門家にチェックだけしてもらえば大丈夫」と考えていると、思わぬ手戻りが発生してしまう場合があります。そうならないためには、制作プロセスやルールに、「Webアクセシビリティ」をうまく組み込んでいくことが重要になります。

弊社では、とてもありがたいことに多くの企業、団体様からWebアクセシビリティに関するお問い合わせを頂き、実際に様々なお手伝いをさせて頂いております。

このようなお問い合わせを頂く企業・団体様は、自社のWebサイトに関してご相談頂く企業様と、クライアントのWebサイトを構築する上で、Webアクセシビリティに関連したご相談を頂く、所謂ベンダー企業様に大きく分類されますが、特に後者のベンダー企業様から弊社にご連絡・ご相談を頂く際に、その最初のお話として多いのは、

  • 納品した、あるいはこれから納品するWebサイト(Webページ)に対してWebアクセシビリティのテストをして欲しい

という、「Webアクセシビリティ検証作業」をアウトソーシングしたいというご依頼です。

弊社でご提供している「Webアクセシビリティ チェック(評価)サービス」は、まさにそういったお客様のニーズにお応えするもので、このようなお問い合わせ、ご依頼を弊社に頂けることは自体は非常にありがたいことなのですが、一方で弊社で該当Webサイトのアクセシビリティをチェックさせていただき、その結果レポートを納品させていただくにあたってご依頼いただいたベンダー企業のご担当者様とお話しさせて頂くと、「プロジェクトのもっと早い段階から御社に手伝ってもらえればよかった」というお言葉を頂くケースがよくあります。

これは納品後、あるいは納品直前の「完成された」Webページ一式に対して、初めてWebアクセシビリティチェックを行うことで発生する、「作業の手戻り」に大きな要因があるかと思います。

ベンダー企業が陥りがちな「手戻り」問題

当たり前ですが、ベンダー企業様はWebサイトの制作に関してプロフェッショナルですから、制作に関しては自分たちだけで対応可能ということで、「最後のWebアクセシビリティチェックだけ専門の会社に依頼しよう」とお考えになるのは自然な流れです。しかし、最後の仕上げにチェックだけしてもらおうと依頼してみたら、我々のような専門家から色々とWebアクセシビリティ上の問題点を指摘されて多大な手戻りが発生するといったことが起こるわけです。

例えば、「JIS X 8341-3:2016」の適合レベル「AA」を目標としてチェックを行う場合、「1.4.3 コントラスト(最低限レベル)の達成基準」(テキスト及び文字画像の視覚的提示には、少なくとも 4.5:1 のコントラスト比がある)という達成基準がチェック対象となりますが、デザインが確定し、実装まで全て完了したWebページに対してこの達成基準をチェックした結果、Webページ内における主要な色の組み合わせに関して、「適合していない」という結果が出てしまう場合があります。

これがWebサイト内で1回しか使われていない色の組み合わせであれば、その部分を修正することで達成基準をクリアできる可能性はありますが、そのWebサイト内で主要な色の組み合わせであり、かつ広範囲に使われている場合、デザイン自体を大幅に修正しなければならないという最悪の事態も発生します。通常、デザインは制作者側だけで決めるものではなく、クライアントによる確認作業などを経て確定するものですので、戻って修正するにしても非常に大きな工数となるだけでなく、納期の遅れを引き起こすなど、クライアントとの信頼関係も壊しかねません。

制作プロセスの中にどう「Webアクセシビリティ」を組み込むか

このような事態を避ける上で重要なポイントは、Webアクセシビリティを「最後にまとめてチェックすれば終わる」「チェックは専門家に任せるので自分たちは結果だけ確認すればいい」などという風に、ある意味「他人事」のように考えてしまうのではなく、一連の制作プロセスの各フェーズにおいて、どのようなWebアクセシビリティ関連の確認や決定、準備や手配が必要になるのかをあらかじめ想定し、必要に応じて制作上のルールとして組み込んでおくといった事前の社内体制作りです。

具体的には下記のような準備や作業、あるいはルール作りが挙げられます。

  • 要件定義時にWebアクセシビリティ方針を策定、クライアントとの間における合意形成、および社内プロジェクトメンバーとの情報共有
  • コンテンツ選定・情報設計時に、必要なデータの検証(例えば動画コンテンツが達成基準に含まれるのであればキャプションのための文字データが必要になりそうなど、用意・手配すべきコンテンツを明確にすること)や、HTMLにおける文書構造をはじめ、該当する達成基準にあわせた情報を網羅したワイヤーフレーム、ドキュメント類の作成
  • カラースキーム(色彩計画)やスタイルガイドをまずは作成し、それらに対してコントラスト比のチェックを事前に行うことで、デザイン確定時には自然と達成基準を満たすような、デザインフェーズにおける社内ルール作り
  • コーディングガイドラインの整備や、HTMLのバリデーション(文法チェック)を義務付けるといった実装フェーズにおける社内ルール作り

近年、特に大手企業のWebサイト構築案件においては、Webアクセシビリティに関する要件を含まないケースの方が珍しいでしょう。一方、自社で高度なWebアクセシビリティに関する知識をもった専門家を確保することは難しいと思いますが、そこまでできなくても、上記で例に挙げたような最低限のルール作りや、抑えておくべきポイントを把握し、備えるだけでも、大きな問題となるような手戻りの発生を防ぐことは可能です。

そして、そのために弊社のような専門企業のリソースをうまく利用する手もあります。

例えば弊社ではWebサイトの運営者となる一般の企業・団体様だけでなく、Web制作会社などベンダー企業様向けにもWebアクセシビリティ関連のスキルトランスファー、社内体制作りのお手伝いをはじめとしたコンサルティングを行っております。最近、Webアクセシビリティを要件に含む案件が多い、それに対応できる社内体制を今のうちに作っておきたいなどといったニーズにも対応可能ですので、ご興味があればお気軽にご相談ください。